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私の欠けているところ
第14章 俺は時のなんなんだよって叫びたくなる
「冷蔵庫、開けるよ?」
俺はそう
時に声をかけ
冷蔵庫の中から
冷たい飲み物を取り出すと
時のそばに
俺も腰を下ろして
その飲み物を
時に差し出した
「心配すんな。
俺がいるから」
「……ありがと…」
時が
そう言った途端だった
ピーンポーン…
「ふかみ~ん」
時はその声に
血相を変え
もっていたグラスを
テーブルに置くと
「キタ」
と小さな声で呟いた
いや
わざと小さな声を出したんじゃない
きっと
声が出なかったんだ
「ふかみ~ん…ガチャ…
あ、チェーン外してくれよ~」
アイツが鍵を開けてる間
俺は時を風呂場に移動させ
出てくるなと伝えると
すぐ
玄関に向かった
そして
ドアを何度も開け閉めし
ガチャガチャと
チェーンを鳴らすアイツに
俺は声をかけた
「どなたですか?」
「え?あれ?」
ドアの隙間から
アイツは俺を覗きながらそう言うと
すぐに不機嫌そうな顔になり
「なんだふかみん
新しい男できたのかよ」
声のトーンは明らかに落ちていた
「あんた新しい男?」
「そう。
だからもう鍵返せよ」
「え~鍵はいいじゃ~ん」
ムカつく奴だ
時のことを
ふかみんとか呼びやがって
「いいわけないだろ!」
俺が
チェーンを外して
ドアを勢いよく開けると
アイツは
両手を上げて
へらへらと笑った
「わ~怖い怖い
暴力苦手なんだよな~
鍵返すからさ
あ~けど残念
ふかみん
金払いよかったのにさ~」
そう言いながら
俺に鍵を渡すと
すぐにアイツは
階段を下りて行ったんだ
そんなアイツを見て
もちろん俺はほっとしたけど
胸がチクりと痛んだ
ほんとに
ろくでもない奴だと思う
そんな
ろくでもないアイツは
時を利用してただけ
だからこんな
あっさりと
退散したんだ
好きなら
こんな簡単に
引き下がるわけがない
そんな
ろくでもない関係が
時の心を支えていたんだと思うと
俺は
そんな風にしてしまった
時の過去を恨んで
拳を握りしめていた