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私の欠けているところ
第14章 俺は時のなんなんだよって叫びたくなる
「時、もう大丈夫。
鍵、返してもらったし
あの様子じゃ
アイツはもう来ないと思う」
そう声を掛け
時を風呂場から出させると
俺は時の手を握り
ベットに腰掛けさせた
「…ありがとう…
梶谷くんが
居てくれてよかった…」
「役に立ててよかったよ。
あ、でもあれだな
しばらく
玄関に男の靴でも
置いといた方がいいかもな」
「あ…うん」
じゃあ…俺、帰るよ
俺の頭の中に
その言葉が
浮かんでいた
だって
アイツから時を守るっていう
俺の役目は
終わったんだし
さっきアイツに
『俺は時の男だ』
って言ったけど
ほんとは
そんなんじゃないし…
時に
帰ってと言われるよりは
マシだし
「時…」
「ん?」
「もう大丈夫か?」
大丈夫じゃないと
言って欲しい
もう少し
『ここに居て』と
言われたい
俺は
時のそんな言葉を期待して
『もう大丈夫か?』と
聞いたんだ
けど
「うん、大丈夫。
ほんとに
ありがと……」
そう言われて
俺がここにいる理由は
無くなってしまった
「じゃあ…」
「……」
「俺」
「……」
「帰るよ」