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私の欠けているところ
第14章 俺は時のなんなんだよって叫びたくなる
「帰るよ」
その言葉を口にした途端
涙が込み上げてきたのがわかった
二度と来ないで
とか
もう連絡しない
とか
そんなことを
言われたわけでもない
ただ自分で
「帰る」と言っただけなのに
俺は
泣きそうになってたんだ
俺、何?
時の…何?
時の考えてる
Siriって……何?
俺
どうやっても
時の男に
なれないのかな
「帰る」と言ったあと
時からの返事はなかった
だから俺も
ベットに座る時の前に
腰を下ろしたまま
動けないでいた
この一週間
時とLINEでは
やりとりしてたけど
内容は近況報告だけ
どんなに
LINEでの会話が短くても
『陸』と呼んでくれなくても
アイツから
時を守らなきゃと
俺の糸は切れることなく
この一週間を
過ごしてきた
けどさ
久しぶりに会っても
時はほとんど
話もしないんだ
俺さ
もう
糸が
切れそうだよ
「なぁ、時…」
「……」
「俺達
終わっちゃうのかな…
俺は
世間話しか
してもらえない
Siriにしか
なれないのかな…」
その時
目の前の時は
膝にのせていた
小さな小さな手を
ぎゅーっと握りしめた
相変わらず
細い指だな
そんなに力入れたら
折れちゃいそうだよ
だから
だからそんなに
強く握るなよ
なぁ…っ
時っ…
…っ…折れちゃうだろ?
……っ時…