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私の欠けているところ
第1章 『再会』から
「えっ!」
その人は俺の声に驚くと
ハッとした顔で俺を振り向き
両手で口元を押さえた
あ、この人…
その時俺は気付いたんだ
その女の人が
深海(フカミ)さんだってことを
「すみません驚かせて。
声はかけたんですけど
聞こえてなかったみたいで」
「あ、ううん、やだ、すみません」
深海さんは
無茶苦茶恥ずかしそうに
訳の分からない返事をした
「あ、いえ、驚かせたのこっちだし
ほんと、すみませんでした」
「ううん、ちょっと油断してた(笑)
扇風機気持ちよくって」
そう言いながら
照れて笑う深海さんは
妙に可愛らしく見えた
深海さんは
俺よりいくつも年上で
俺が入社した当時
研修で数時間お世話になった先輩
研修の時は
頼りになるクールな感じの人だと
思ってたんだけど…
「お客さんですか?」
「あ、いえ、単純に喉が渇いて(笑)
フロアのウォーターサーバー壊れちゃって」
「あ、そうなんだ。
今日暑いもんね。
じゃ、冷たいお茶入れるね」