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私の欠けているところ
第1章 『再会』から
恥ずかしくて
さっきまでのことを
無かったことにしたいのか
深海さんは
いそいそと俺に冷たいお茶を
入れはじめた
深海さんと会うのは
ほぼ一年ぶり
研修が終わると
社内規定で
一年間支店で働くことになってるからだ
俺が本社でに戻ってきたのは
先月
だから
深海さんは俺のことなんか
覚えてないだろう
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます。
いただきます。
あー…冷たくて最高」
「クスッ(笑)普通の麦茶よ?」
「いや、ほんとに美味いです」
俺が麦茶を飲み干してそう言うと
深海さんは
ニコッと笑いながら
俺に手を出してみせた
え?何?
再会の握手?!
訳がわからなくて
俺が若干動揺してると
深海さんは
空になったグラスを
俺の手から取り上げて
「洗っとくね」
と、微笑んだ
だ、だよな(笑)
何勘違いしてんだよ俺
「じゃ、じゃあ…ご馳走さまでした」
「いえいえ」
そして深海さんは
グラスを洗いはじめてしまった
なんとなく
もう少し
深海さんと話していたかったけど
俺にはもう
ココに居る理由が無い
仕方なく
俺は小さく深海さんに頭を下げて
給湯室を後にしたんだ
それが
深海さんとの一年ぶりの再会で
今思えば
その再会が
俺の
恋の始まりだったんだ