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私の欠けているところ
第3章 『あいつ』のせいじゃなくて

それから深海さんは
ちょっと気を許したのか
今までよりも笑顔が多く
お酒も進んでるみたいだった
ピタリとした今日の服は
少し胸元が開いていて
くっきりとした鎖骨が印象的
色白の深海さんは
酒が進むと
その鎖骨をやや赤く染めて
俺は簡単に誘惑されてたっけ
「あ、そうだ深海さん」
「ん?」
「矢部さん知ってます?」
「もちろん!
一緒にお仕事させてもらってたの、昔」
「矢部さんもそう言ってました」
すると深海さんは
少し苦笑いをしながら
ちょっとバツの悪そうな顔をして
変なことを口にした
「そっか…なるほど。
うん、わかった。
謎がとけた」
「え?」
「ううん、いいの。
何でもないよ」
その時俺は
ふと矢部さんの「けど…」
って言葉を思い出したけど
その場の雰囲気を壊したくなくて
深海さんの意味の分からない言葉とともに
全てをスルーすることにした
「あ、そうだ!」
「ん?なんですか?」
「梶谷くんにお願いがあるんだけど」
「わ、なんですか?
深海さんのお願いならなんでも聞きますよ!」
「クスッ(笑)
あのね」
「はい」
「そんなに敬語使わないで欲しい」
「え?いいんですか?」
「うん。
敬語だと…
ちゃんとしなきゃ!って思っちゃうから」
そっか
そんな風に思うのか
「わかりました。
ここからは敬語なしにするんで
ちゃんとしなくていいですよ(笑)
ゆる~っとして下さい」
「うん」
「じゃあその代わりに
俺もお願いがあるんです…
じゃあなくて
お願いあるんだけど」
「クスッ(笑)、何?」
「矢部さんみたいに呼びたいです。
深海さんのこと」
「えっ、やだ(笑)」
「いいじゃないですか~
友達なんだし」
「あ!今、敬語だった!(笑)」
「あ~~癖になってる~(笑)
頑張って直すからさ
マジお願い!
いいよね?
ね、いいよね?!」
「いや、でもほんとに恥ずかしいから…」
「大丈夫。
すぐに慣れるって
時ちゃん」

