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私の欠けているところ
第1章 『再会』から

「沖縄屋、行ったことあるんですか?」


俺は
隣を歩く深海さんの横顔を
チラチラと覗きながら
ゆっくりと歩いていた

相変わらず綺麗な
長い前髪が風になびき
思わず触りたくなる

髪は少し明るく染められているけど
その色は柔らかな茶系で
深海さんの白い肌が
より一層際立っていた


「何回か行ったことがあるの。
変わった料理もあって
美味しいよ」


うん、知ってる


「そーなんですか。楽しみだな」


「えーっと…こっち、かな?」


深海さんは
少し歩いたところで
右手に曲がるような仕草をみせた


「あっ、こっち…ですか?」


「確かここを右に…」


お、おい
ちょっと待てよ
沖縄屋は左だぜ?

深海さんは
完全に道を間違えてるようだった

けど俺に
それを訂正する権利はない
沖縄屋を
知らないことになってるんだから


まぁいいや

迷った方が
長く一緒にいられる

そう思いながら
深海さんの言う通りに右へ曲がり
沖縄屋とは
全く逆方向へと俺達は歩いた

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