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私の欠けているところ
第6章 苦しくて…苦しくて…

「えっ…」
「好きな人の代わり
だよね」
「……」
いや
違う
時ちゃんが好き
「いいよ」
「酔ってる?」
「……」
その言葉に
返事がないまま
時ちゃんは
すっ…と目を閉じた
俺は
その目に
その唇に吸い寄せられるように
時ちゃんに近づくと
どうにかなりそうなくらい
鼓動の音が半端なかった
「俺の鼓動
聞こえてる?」
小さなピアスに
囁くと
時ちゃんは
黙ったまま小さく首を振り
「もしかして
私の鼓動聞こえてるの?
…んっ…」
その言葉に
たまらなくなった俺は
返事をすることなく
『してはいけないキス』を
していた
けど
時ちゃんの
鼓動は全然聞こえなくて
自分の鼓動しか聞こえない
俺は
時ちゃんの鼓動が
聞きたいのに
時ちゃん…
時ちゃんが
好きだ
「…っん…」
俺は
時ちゃんを
ゆっくり押し倒し
小さなピアスを
指でなぞりながら
二人で舌を舐め合った
夢にまで見た
時ちゃんの舌は
柔らかく
小さく
そして
優しい
好きな人の代わりなんかじゃない
俺は
時ちゃんが
好きなんだ
時ちゃんも
俺を好きなんだろ?
だから
キスを…
その時
ふと
俺は矢部さんの言葉を
思い出した
『けど…』
けど?
『断れない性格』
断れない?
もしかして
それが嫌なことでも…
俺は
ハッとして
すぐにキスをやめ
ラグの上に寝そべる
時ちゃんを
見つめた
潤んだ瞳
少し荒く呼吸する胸
少し濡れた…唇
「ごめん」
「いいの」
「うがい…してくれ」
「いいの」
「どうして
してもいいなんて
言ったんだよ」
「だって」
「……」
「梶谷くんがしたいなら
そうさせてあげたいと思ったから」
「なんで」
「梶谷くんに
嫌われたくない」

