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私の欠けているところ
第7章 それでもやっと見つけた世界は
『あれから
キスしてないの?』
『してねーよ。
彼女いないし
時ちゃんとできないし』
『しないなんて
言ってないけど』
『そうだっけ?』
『あれから
したいって
言われてもいないし』
だって
時は
したくないんだろ?
『したい』
『もう(笑)』
その頃俺達は
そんなスレスレの会話をしていた
どちらかが押せば
倒れるような
そんなスレスレのところに
立っていたんだ
あの日までは
『明日暇?』
『明日になってみないと
分からないかな。
亮ちゃんが帰ったら暇』
『暇だったら出かけない?』
アイツが
時のことを
束縛しない相手だと分かってから
俺達は
時々出かけるようになっていた
時はまだ
躊躇うこともあるみたいだったけど
俺が喜ぶからという理由で
付き合ってくれていた
『どこに?』
『ん〜…』
時と一緒なら
俺はどこでも良かった
『海』
『え?!』
『時ちゃんの水着見たい』
『無理(笑)』
『だよなー(笑)
じゃあ電車乗って
海見に行くだけ。
行きたい!』
『分かった。
亮ちゃん帰ったら
LINEするね』
『ヤッホー!』
『可愛い(笑)』
『またー
子供扱いすんなよー
俺はもう大人だぜ?』
それなりに
セックスだって
やってるし
『そうよね。
ごめん』
『今度ハグさせてくれたら
許す』
『(笑)
いつもしてるじゃない』
そう。
俺達はあれから
会えば必ず
抱きしめ合っていた
お互いの
寂しさを癒すために。
そのハグの時間は
少しずつ長くなり
俺の部屋にいる時は
まるで恋人のように
ソファで
身体を寄せ合うこともあった
『だな(笑)
そろそろ眠れそう?』
『うん』
『ほんとか?』
『うん。
そろそろ寝るね』
『眠れなかったら
またLINEしろよ?』
多分俺
このまま
息子を握るから
『ありがとう、梶谷くん』
『俺こそ
ありがとな。
寂しかったから
時ちゃんと話せて良かった』
すぐ
いけそう
『じゃ、おやすみ』
『おやすみ』