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第2章 お誕生日
食事を終えて、店を出た。

「あなたに会えて良かったわ。せっかくのお誕生日だったのに、邪魔してごめんなさいね」

「じゃぁ。ママに宜しくな。真っすぐに家に帰るんだぞ?」

私は、ふたりと駅で別れた。家とは反対の方向へと並んで歩いていくふたりを見ているのが嫌で、さっさと改札口へと歩いた。

…家に帰ってもママは何も聞かない。

母はそういう人だ。

途中のコンビニで、ジュースと雑誌を買い、商店街の中を家へ向かって歩いた。


…あ。

友人達と一緒に居酒屋から出てきた集団の中に小牧さんを見つけた。声を掛けようと近づくと、あとから来た髪の長い女性が小牧さんと手を繋いで、集団とは別の方向へと一緒に歩いていく。

…彼女?

ふたりはとても親し気で、女性が小牧さんに時々寄りかかったりしている。

―――ドンッ。

ふたりに気を取られ、見知らぬ人にぶつかり、コンビニの袋を落としてしまった。袋からころころと転がり出した缶ジュース。

「すみませんっ」

ぶつかったのは会社員らしい人で、ちょっと嫌な顔をしたけれど、何も言わずに去って行った。


ふとジュースを探すと、偶然私を追い越してきた涼が道に転がった缶ジュースを拾ってくれた。

「大丈夫?」

涼は私に静かに聞いた。話すのは、あの夜以来だ。

「うん。大丈夫。ありがとう」

帰る方向は一緒だ。

…気まずい。

お互いに少し離れて歩いた。だけど、涼が歩調を私に合わせてくれているのが分かった。

「元気?」

「うん。」

―――― わはははは。

若者の集団から笑い声が起こり、ふたりとも一瞬そちらに気を取られた。それ以降の会話が続かない。

「…色々と大変だったね」

「うん。今は、自由に買い物も出来ないよ」

涼は苦笑いをした。

「今日はどうしたの?」

「駅前の本屋に行って参考書買ってた」

涼は書店の名前が書かれた厚手の袋を持ちあげてみせた。

「好ちゃんは?」

「お父さんに誕生日プレゼントを貰ったの」

今度は私が、父から貰った紙袋を持ち上げて見せた。




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