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贖罪の檻。【煉獄━ レンゴク ━】
第20章 兄妹の、可能性
父の記憶があまりない。母の記憶は、ある。優しくていつもお日さま匂いがして・・・・・・
兄と2人になって両親を思う日が少なくなった。寂しくはなかった。
だから〝兄と母〟に償うとは、いったいなにを意味しているのかが判らない。
》 》
襲撃事件から1週間セキュリティー強化をした家は、相変わらず兄の狂気と妹の揺れる想いで占められていた。
「月良さま、おはようございます。」
「おはよう、ございます・・・奈音さん。」
挨拶をされてようやく気が付いた。
「昨夜も大変でしたか?」
身体を起こさず挨拶だけ返してくる少女の様子で判る。
「さぁ、起きて下さい。支度をしなくちゃ・・・」
「〝支度〟・・・?」
「ええ。支度しますよ。」
少女をベッドから抱き起こす。虚ろな瞳を向けられ笑顔で対応する。
「お湯を入れたからお風呂に入りましょう。」