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空洞
第2章 相田 樹(あいた いつき)
樹はパニック寸前だった。

「いっ君可愛いから、困らせたくて…
わざとドア開けておいたの…」
そう言いながら、夏美はいたずらな笑顔を浮かべ、樹の顔を覗きこんだ。

手は夏美の胸元のまま、樹は顔が紅潮して、カァッと赤くなるのが自分でもわかった。
「いっ君、耳まで赤いよ。…チュッ」
夏美が樹の耳タブに軽くキスをした。

「あの…俺…」
絞り出すように言葉を発した。

「ねぇ?いっ君…私のこと嫌い?」
あと数センチで唇が重なる距離で、夏美が囁く。
樹は戸惑いながら、やっとの思いで、首を横に振った。

唇がゆっくりと重なる。
夏美は掴んでいた手を離し、樹の背中に手を回した。

樹は目を見開いたまま、息を吸うことも出来ずにいた。
そして次の瞬間、夏美の手をほどいて、身体を離した。
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