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VERTEX
第9章 運動不足…
「いいのか?」
「いいよ。」
本当なら帰ってジムで練習をしたい涼ちゃんが私の為に1日を作ってくれただけで満足だと思う。
私の提案に涼ちゃんが笑ってくれるだけで幸せな気分になる。
ホテルに帰って自転車を借りる。
海岸沿いを走る涼ちゃんを追いかける。
島に来て1つだけ感じたのは都会とは違って涼ちゃんにサインを求める人が居ないという事。
時々、涼ちゃんを見る人は居るけれど声を掛けてまでサインや写真を言う人は誰も居ない。
時間だけが穏やかに流れる島の生活に憧れる。
「鍾乳洞があるらしい。」
「タクシーの運転手さんが言ってた青の洞窟?」
「あれは島の北側。展望台の方にある奴。今は島の南側に来たから別の鍾乳洞…。」
私の方向音痴は小さな島でも変わらない。
「虫が出るなら嫌よ。」
「居ないとは断言出来ない。」
「なら、パス…。」
ランニングをする涼ちゃんとそんな話をしながら島を走り回る。
ラストは海岸で筋トレ…。
至る所に海岸があるから練習には不自由しない島だと感じる。
涼ちゃんの息が上がって来る頃に練習を止めさせる。
「満足した?」
「理梨は?」
「満足だよ、ありがとう…。」
夕日を2人で眺めながらキスをする。
明日は帰る。
また、いつもの日常に帰らなければならない。
夏の終わりにはトーナメントがあるから涼ちゃんにはお盆休みなんかない。
「風呂に入って、飯に行こう。」
涼ちゃんがそう言ってホテルに向かって走り出す。
涼ちゃんの背中を追いかける。
いつだってお互いが追いかけっこをしている。
「理梨!ダッシュ!」
ホテルまで有り得ない速度で涼ちゃんが走り出す。
どんだけスタミナの塊!?
自転車で追いかける私の方が息切れがする。