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VERTEX
第9章 運動不足…

機密とか守秘義務とかVERTEXとの契約で時々だけど難しい事が発生する。
それは家族にも言えない話…。
「わかった…、帰る。」
「明日は迎えに行くから…。」
涼ちゃんが私の額にキスをする。
私だけが家の前で車から降ろされた。
家に帰るとホッとする。
基本的にマイペースなお母さん…。
「お土産は?」
「宅急便だから明日には届くよ。」
「仕事は上手くいったの?」
「後は東京での撮影だって…、国崎さんがNGした部分をもしかしたら追加で他の形にして撮影し直すかもしれないとか言ってたよ。」
「大根ってわかってて使ったんだから、ちょっとくらいの失敗は大目に見てあげればいいのに…。」
他人事で呑気なお母さんに呆れてしまう。
「そういう問題じゃないみたいだよ。」
「ふーん、芸能界って大変だね。アンタも涼ちゃんと付き合っていくつもりなら気を付けなさいよ。」
「涼ちゃんはファイターで芸能人じゃないよ?」
「でも、ずっとファイターが出来るとは限らないでしょ?万が一の時もあるし。」
お母さんの言葉に背筋がゾクリとする。
「万が一…?」
「そう、怪我とかしたらアスリートって戦力外通告とかあるんでしょ?野球選手とか困ってますってテレビとかでやってるじゃない。」
「涼ちゃんは大丈夫だよ。」
「未来は誰にもわからないって事よ。今更、涼ちゃんがお父さん達みたいにサラリーマンが出来るとは思えないし、そういう意味ではアンタがしっかりしないと大変な事になるわよ。」
お母さんが今まで涼ちゃんになんでも買わせて無駄遣いをさせるなと言っている意味がなんとなくわかって来る。
涼ちゃんなら大丈夫…。
そんな保証はどこにもない世界なんだと感じた。

