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VERTEX
第10章 取らないで…

前回みたいに追い出される心配がないだけでも気分的に違う。
それでも選手やタレントさん、スポンサーさんや関係者ばかりの派手な打ち上げ参加をする一般人の静香さんと私は隅っこの壁際で静かに終わるのを待つ事になるのは変わらない。
早く終わらないかな…。
スポンサーさんに篠原さんと挨拶をしている涼ちゃんを遠巻きに眺めながら思う。
「お飲み物をお持ちしましょうか?」
知らない人にそう言われる。
ゆっくりと顔を上げて見る。
背の低い私にはかなり首を上げなければ顔が見えない背の高い男の人。
どんだけー?
やっと、その人の顔が見える。
うげっ!?
と叫びそうになる。
「それとも何か食べる?」
柔らかい笑顔でその人が聞いて来る。
「のー…、さんきゅー…。」
馬鹿な答えを返していた。
キラキラの金髪に石垣島で見た海のような蒼い目をした男の人…。
「要らないの?」
不思議そうに外国人の男の人が私を見下ろしている。
「静香さん!?」
「理梨ちゃん、落ち着いて…、その人…、日本語で話してるわよ。」
そう言いながら静香さんも引き攣った顔をしている。
「えー!?静香さんの知り合い?」
静香さんが私の質問に首を横に振る。
「えーと…。」
何故か蒼い目の人までもが引き攣った顔をする。
「何にも食べないし、何にも飲みませんから、そっとしておいてやって下さい。」
「でも、ここに居るって事は関係者だよね?」
「いいえ、結構です。」
会話が噛み合わずにその人が立ち去る事をひたすらに祈ってしまう。
「ミケ!ダメよ…。彼女達は内山田さんのジムの関係者なんだから。」
聞き覚えのある声がする。
その方角へと顔を向けた。

