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VERTEX
第2章 お迎え…
出来るだけ、このど田舎に似合わない彼らを見ないようにして自分の家の小さな門を開ける。
「ねぇ、ちょっと君…。もしかして格闘家のRYOJIさんの知り合い?最近、女優の国崎 美波(みなみ)さんをこの辺りで見掛けた事はあるかな?」
マイクを持つ男の人がそんな質問を私の背中に浴びせて来る。
国崎 美波?誰だっけ?
ほとんどテレビを見ない私にはわからない。
「知りません。」
振り返って、そう答える。
「本当に?教えてくれたら謝礼は出すよ。」
男の人が詰め寄り、うちの門に1歩足を踏み入れる。
「すみません、うちには入らないで下さい。警察を呼びますよ。」
ジムからはこういう時はそう言えと言われている。
「ごめんね、何か知ってる事があれば、ここに連絡をしてくれないかな?本当に謝礼は出すからさ。」
男の人はうちのポストに勝手に自分の名刺を入れて私の前から立ち去った。
お小遣いを出せば女子高生ならべらべらと喋るだろうと思われている辺りにムカついた。
イライラとしながら玄関を開けて靴を脱ぎながら
「お母さん!涼ちゃんがまたなんか、やらかしたみたいだよ。」
と声を掛けてお母さんが居るであろう茶の間の襖に手を掛ける。
この時間は大概、お茶を啜りながらワイドショーを見ているお母さん。
お母さんなら女優の国崎なんたらを知ってるかな?
そう考えて勢いよく襖を開けた。
「「おかえり…。」」
お母さんの声が何故かサラウンドする。
「なんで、アンタがここに居る!?」
そう叫ばずにはいられない。
外のリポーターが探している男が我が家の茶の間で大福餅をお母さんと食べてるからだ。
「だって…、帰れなくて可哀想なんだもん。」
その男の代わりにお母さんが答える。