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VERTEX
第2章 お迎え…
お母さんの言葉に男が情けない顔をして
「理梨も大福を食う?」
と聞いて来る。
悪いが、それはうちの大福餅だと言いたくなる。
「今度は何をやったの?」
「俺は何もしてない。」
いじけたように答える涼ちゃんの隣りに座って、わざとテレビを付けてやる。
普段、お母さんが見るワイドショーが丁度、画面に映し出される。
『熱愛発覚!?格闘家と女優の深夜デート…。』
画面の隅に浮き上がる文字を見て納得する。
「俺は何もしてない?」
「してない!」
犬が私にしがみつく。
飼い主には従順なところは変わっていない。
そもそも、この熱愛報道は2度目…。
去年、涼ちゃんがVERTEXでデビューした瞬間にラウンドガールをやっていたグラビアアイドルが写真集の宣伝に涼ちゃんを利用した。
その時はVERTEXからそのグラビアアイドルに注意が出されて、すぐに熱愛報道は冷める空気で沈静化を果たした。
「今回は?」
「番組の打ち合わせに会長と飯を食いに行った。」
私に素直な涼ちゃんはなんでも話をしてくれる。
食事会には番組のプロデューサーと国崎さんが来ていた。
国崎さんは今年のVERTEXのキャンペーンガールとして採用されている立場だ。
お母さんに言わせれば女優と言ってもかなりの大根役者で、今は短大生だから『現役女子大生女優』という肩書きでテレビに出ているが、今年、短大を卒業すれば肩書きを失う崖っぷち女優らしい。
その為に男性ファンが多いVERTEXのキャンペーンガールの仕事は重要な仕事になる。
キャンペーンガールは番組宣伝で出演する他の番組などで口下手な格闘家が失敗しないようにフォローする役目もあるから当然、この先は涼ちゃんが他の番組に出れば一緒に仕事をする機会が増える。