この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
VERTEX
第15章 迷子…
扉が開き、糸のような目をした篠原さんが私を見て目を丸くする。
「理梨ちゃん…?」
「お邪魔でしたか?」
「そんな事はないよ…、涼二!理梨ちゃんが来たぞ。」
篠原さんが控え室の中に向かって声をかける。
てっきり篠原さんと涼ちゃんだけだと思っていた。
涼ちゃんが座っているベンチに知らない女の人が座っている。
「理梨ちゃんって…、あの理梨ちゃん?」
その女の人がそう涼ちゃんに聞いている。
「理梨の事は書くなよ。」
涼ちゃんがその人に嫌な顔をする。
誰…?
私を知ってる人?
女の人がベンチから立ち上がると私の前に来た。
「はじめまして、稲川 胡桃(くるみ)です。VERTEXの広報記者をやってます。涼二とは古い付き合いだから理梨ちゃんの事は知ってるの。」
胡桃さんが私に握手を求めるように手を差し出して来た。
無意識のまま、その手を握ると胡桃さんがキツく私の手を握る。
「VERTEXの広報さん?」
和美さんと同じなのかと考える。
「私は記者…、選手にインタビューとかをしてVERTEXが出すHPなどに記事を載せるのが仕事なの。」
今は涼ちゃんの試合前のインタビューの時間だったらしい。
「お仕事の邪魔をして、ごめんなさい!」
胡桃さんに慌てて頭を下げていた。
「いいの、今、終わったところだし…、1度は理梨ちゃんに会いたかったから…。」
「私に?」
「うん、涼二がチャンピオンになる為に必要な女の子って興味があったの。」
胡桃さんが真っ直ぐに私を見ていた。
「胡桃…、仕事が終わったなら、さっさと出て行けよ。篠原さんも悪いけど理梨と2人にしてくれる?」
不機嫌に涼ちゃんが言う。