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VERTEX
第16章 受験生…



涼ちゃんが切ない顔をした。

ゆっくりと私の顔を撫でて来る。


「静香さんには絶対に言わないと約束が出来るか?」


涼ちゃんの言い方から静香さんもやはり知らない話なんだと思う。

静香さんも私も…。

どこまで行っても部外者なんだと感じる。


「静香さんに言えないの?静香さんは霧島さんの奥さんだよ。もうすぐ子供だって生まれるのに…。」


自分の不満を静香さんに重ねて涼ちゃんにぶつけてしまう。

涼ちゃんに何かが起きても私には知らされないという不満…。


「霧島さんがそう望んだんだよ。静香さんに話すかどうかは霧島さんの問題だろ?」

「何を話すの?頂点を辞めますって話?」

「霧島さんの視力が落ちてるって話だ。」


涼ちゃんが厳しい顔をした。

耳鳴りがする。

霧島さんが?

何…?


「視力…?」

「俺と理梨が石垣島に行く少し前くらいから霧島さんが時々、目が霞むって言うから会長が検査に霧島さんを行かせたんだ。」


しばらく霧島さんが休んでいた事を思い出す。


「確実に視力が落ちている。はっきりとした確定は出来ないけど…、パンチドランカーになる可能性がある以上はその前に霧島さんの試合に制限をかける必要があると会長とVERTEX側が判断をしたのが頂点を降りるって事だ。」


静かに涼ちゃんが話をする。

視力が…。

だから頂点を…。


「降りたら霧島さんはどうなるの?」

「トーナメントでは戦わないってだけだ。霧島さんの人気はダントツだからな。レジェンドとしてエキシビションマッチでファイターを続ける事になる。」

「エキシビションで…?」

「減量の必要もなくなる。今まで通りのファイトマネーも人気が続く限り保証される。だから霧島さんは頂点を降りる決心をしたんだ。」


これ以上の戦いは霧島さんの身体に負担がかかってしまう。

それなら頂点を降りて楽な試合にだけ出る方が霧島さんにとってはいい選択になる。


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