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VERTEX
第16章 受験生…
地方巡業のファイターは格闘だけでは食べてはいけない事は私にもわかっている。
「VERTEXが無くなったら涼ちゃんはどうなるの?霧島さんはどうなるの?」
目眩がする。
自分の将来すら定まっていない私に涼ちゃん達の将来なんか理解が出来る訳がない。
「今すぐにVERTEXが無くなる訳じゃない。もし何年か先にVERTEXが無くなれば俺は理梨とのんびりと暮らしたいだけなんだ…。」
「のんびりって…。」
「そのくらいの金なら今、VERTEXがあるうちに充分に稼げる。後はあの田舎で畑を買うとか南の島で暮らすとか…、贅沢をしなければ普通に生活は出来るって話だ。」
意外と現実的な涼ちゃんに驚いた。
車はお父さんの会社の平凡な車を買った涼ちゃん。
田舎で平凡な暮らしをするなら問題がないと涼ちゃんが笑う。
だから無理にタレントもしたくないと言う。
「理梨が心配をする事はないって言ったろ?」
いつも通りの笑顔を私に向ける涼ちゃんが居る。
私は何も心配をしなくていい…。
「そう…、なんだ…。」
目の前が…。
少しずつボヤけて暗くなる。
「理梨!?」
最後に聞こえたのは涼ちゃんの叫び声だった。
「何やってんのよ?」
不機嫌なお母さんが居た。
夕べ、ホテルで意識を失った。
慌てた涼ちゃんが病院へと連れて行ってくれた。
貧血と栄養失調…。
涼ちゃんに合わせて食が細くなっていた私は自分では全く気付く事なく、そんな身体になっていた。
病院で点滴を受けてすぐに意識を取り戻した私は朝には涼ちゃんとホテルを出て家に帰って来た。
夕方まで私が帰らないとばかり思っていたお母さんがひたすら私に呆れた顔をする。
「お母さんがダイエット中だからってそれは何かの嫌味なの?」
お母さんが口を尖らせる。