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第16章 受験生…



「すみませんでした。」


涼ちゃんはご機嫌斜めなうちのお母さんに平謝りをしている。


「涼ちゃんのせいじゃないわよ。ちゃんとご飯を食べなかった理梨が悪いんだから。」


そう言われても…。

事実だから私は言い返す事も出来ない。


「俺…、帰るから、理梨はちゃんとご飯を食べて今日はゆっくりと寝ろよ。」


そう言って涼ちゃんが自分の家に帰って行く。

涼ちゃんが居なくなれば、ここぞとばかりにお母さんと話をする。


「霧島さんが頂点じゃなくなっちゃう。」


夕べの話を必死になってお母さんに伝える。

うんうんとお母さんは真剣に聞いてくれる。


「でもね、理梨。霧島さんの事は結局は霧島さんの家族の問題なのよ…。」


お母さんも涼ちゃんと同じ意見を私に言う。


「でも…。」

「理梨が怖いのは、もし、涼ちゃんが霧島さんみたいになったらどうしようと思うから怖いんでしょ?」


図星だと思う。


「アンタ…、涼ちゃんしか知らないものね。その涼ちゃんが涼ちゃんじゃなくなったらどうしようと思うから怖くなるのよ。」


呆れたように笑うお母さんに何も言えなくなった。


「短大を出るまで、ゆっくりと考えなさい。人生は涼ちゃんだけじゃないんだから…。」


そう言ってお母さんが買い物に出掛けた。

ダイエット中だけど今夜は私の為に焼肉にしてくれると言うから、夕食まで自分の部屋で眠った。

そして夢を見る。

私の前にズラリと手が並ぶ。

それは全部知らない人の手…。

涼ちゃんの姿を探し回る。

方向音痴な私に見つかる訳がないのに私は涼ちゃんを探してしまう。

涼ちゃんが居ないのに耐えられない。

涼ちゃんを見つけて涼ちゃんに抱きつこうとした。

その私の腕を誰かが引っ張るから私は涼ちゃんのところに辿り着けない。


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