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VERTEX
第16章 受験生…



休暇中の練習はジムから止められている。

だけど涼ちゃんは身体を使わない日は眠れなくなる。

その為に私の付き添いで軽くロードに出掛けたがる。

まさに犬の散歩…。


「お母さん…、行って来る。」


犬男を連れて日が暮れる田舎町を走り回る。

犬男はご機嫌でランニングをする。

普通に走るだけならいいけど…。

ダッシュやシャドウが含まれるランニングでは自転車の速度をいきなり上げたり止まったりと普通の人には大変な道のりになる。

それを約10kmは走る事になるからお母さんがやればいいダイエットになるんじゃないかと考える。


「飛ばさない約束!」

「えーっ!?」


はしゃぐ犬男は伴走者の事などお構い無しだ。

5km先の公園で折り返す。


「涼二?」


公園の横の道で信号待ちでシャドウをする涼ちゃんが呼び止められた。


「胡桃さん…。」

「理梨ちゃんも…。涼二の付き添い?」


私が話すべきかを迷っていると信号が青に変わり涼ちゃんが走り出す。


「すみません、今はロード中なので…。」


胡桃さんに私だけが頭を下げて走り出す。


「ちょっと…、涼ちゃん!」

「あー?」

「胡桃さん…。」

「それがどうした?」

「挨拶くらいすれば?」

「立ち止まったらロードになんねぇよ。胡桃だってその程度の事はわかってるはずだ。」


VERTEXの人だから…。

ファイターの練習の邪魔は許されない。

なんとなく涼ちゃんが冷たいと感じる。


「胡桃さんと…、なんかあんの?」

「ねぇよ…。全部、理梨に話したじゃん。」


私の質問に答えるのが面倒だとばかりに涼ちゃんがダッシュをする。

追いかけるのだけに必死になる。


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