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VERTEX
第17章 間違ってる…
年末までだから…。
年末が終われば涼ちゃんは春まではシーズンオフになり、私は学校を卒業するから少しは自由になる。
短大でも宗教的指導は強いけど、高校ほどの厳しい校則は存在しない。
後少し…。
涼ちゃんがチャンピオンになる。
私は短大を卒業して涼ちゃんと結婚をする。
それで全てが上手くいく。
きっと今みたいな不安はお互いになくなる。
私と涼ちゃんも霧島さんと静香さんのように幸せな夫婦になれるはず。
甘い考えだけで日常を消化する。
「サイン会?」
「うん、だから涼ちゃんと名古屋に行って来る。」
「名古屋の名物って何?」
その程度しか気にしないお母さんは私が涼ちゃんと出掛ける事に反対なんかしない。
「ダイエット中でしょ?」
「2kgは痩せたのよ!」
全く見た目の変わらないお母さんに呆れた。
朝には涼ちゃんのお母さんが新幹線の駅まで涼ちゃんと私を送ってくれる。
帰りも迎えに来てくれるとお母さんが言う。
「理梨ちゃんにあまり迷惑を掛けないのよ。」
涼ちゃんは涼ちゃんでお母さんにお説教を受けながら送り出されるという形。
「俺…、そんなに理梨に迷惑とか掛けてるか?」
新幹線で2人だけになると犬男が情けない顔をする。
「みっともないからやめなさい…。」
1歩外に出れば涼ちゃんはRYOJIとして色々な人から注目を浴びる。
新幹線にはサイン会に向かうファンも乗り合わせている事が多い。
隠れて携帯のカメラを向けている人もいる。
駅員さんが来れば、そういう人は注意をして貰う。
高校生の女の子に情けない顔をしているRYOJIなんか拡散されちゃ堪らないとか思う。
涼ちゃんは出来るだけ窓の外に顔を向けてカメラに撮られないようにする。