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VERTEX
第17章 間違ってる…



サイン会の準備が終われば私はこの会場から立ち去る事になる。

去年みたいに追い出される訳じゃなく、他のスタッフさん達の混乱を避ける為。

ファンの様子を見る為にホテルのフロントの方へと向かってみた。

黒田さんが居るからなのか女性が多いと感じる。

しかも、うちのお母さんくらいの年齢の女性…。

黒田LOVEの団扇を持ったおばさん達の集団に黒田さんが本当に俳優さんなんだと納得する。


『この世界は売れるか売れないかだけよ。』


そう言っていた国崎さんの言葉が今わかったような気がする。

売れないから格闘で身体を張る。

だけど勝てないから格闘の世界でもトップにはなれない綺麗な黒田さん。

あの綺麗な顔が殴られて歪むとか想像をするとゾッとしちゃう。

その歪む顔に萌えるおばさん達が熱狂的に黒田さんの応援をしている。

頭が痛くなるような気がした。


「理梨ちゃん?」


普通の女の子の声がする。

その声の方へと振り返る。


「咲良ちゃん…?」


驚くしかなかった。


「咲良…、お友達か?」

「ええ、パパ。同じ学校のお友達。」


ロマンスグレーのおじ様に咲良ちゃんが満面の笑みを浮かべている。


「はじめまして、幸村 理梨といいます。」


初めて見る咲良ちゃんのお父さんに頭を下げた。


「理梨ちゃんはもしかしてVERTEXのサイン会ですの?」


咲良ちゃんが聞いて来る。

なんで咲良ちゃんがVERTEXのサイン会を知ってるの?

そんな疑問が頭に過ぎる。


「確か、理梨ちゃんってVERTEXをご存知って言ってましたよね?」

「ええ、まぁ…。」

「理梨ちゃんはどなたのファンですの?うちのパパが来年からVERTEXのスポンサーをする事になりましたの。今日は地元の選手の方と食事会があると聞いたので来てみたのですが…、理梨ちゃんもファンならご一緒しませんか?」


咲良ちゃんの説明に愕然とする。


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