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VERTEX
第19章 欲しいのなら…
いやいや…。
まずもってVERTEXとボクシングは別物です。
それにVERTEXでのテレビ放映で観客はほとんど映る事はありません。
そうは思っても、それを彼女達にいちいち言う訳にはいかない。
「そのボクシングと幸村さんは関係があるの?」
突っ込まなくても良い部分を藤谷さんが聞いて来る。
「だって理梨ちゃんもそのVERTEXのファンなんですよね?だったら年末のイベントにはご一緒しませんか?」
咲良ちゃんはあくまでも親切だけで言っている。
「幸村さんがボクシング!?」
お取り巻きの3人だけが目を丸くして私を見る。
「あー…、うちのお父さんの会社も一応はスポンサーだから…。」
苦笑いをして、その事実を言うしかなかった。
うちの場合はサラリーマン…。
されど、ありがたい事に大手自動車会社であるお父さんの会社はVERTEXの放送枠のCMスポンサーをやってくれている。
「あら…、そうでしたの。」
「だから…、年末のチケットはお父さんの会社から貰うと思うよ。」
まさかの涼ちゃんから毎回のチケットを貰っているとは言えない。
「では、会場の方でお会い出来ますよね?」
咲良ちゃんが笑顔で聞いて来る。
残念ですが、お会いはしたくはありません。
そんな本音を飲み込んでわざと教科書を机の中から取り出した。
私が勉強をする体制を見せれば必然と咲良ちゃん達は私から離れてくれる。
優等生の肩書きはそういう風に利用する。
休憩時間などに自習をやっていれば先生に余計な手伝いを頼まれたりもしないからと身に付いた習慣。
テレビを見ない私には他の人との共通会話を見つける方が難しい。
だから退屈であっても私は自分の殻に閉じ篭る学生をずっと演じて来た。