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VERTEX
第19章 欲しいのなら…



涼ちゃんは加藤さんとリングの上に居た。

ジムのざわつきを耳にした加藤さんがミケの方へと視線を向ける。


バシッ…。


グローブが肉に当たる音がして加藤さんがリングのマットに膝をつく。


「加藤!涼二とのスパーに余裕なんかないんだ。よそ見とか絶対にするな!」


リングのコーナーで会長さんがハリセンを振り回して加藤さんを怒鳴りつける。

涼ちゃんはミケに気付いていないみたいにフットワークを止める事なくガードしたまま加藤さんが立ち上がるのを待っている。


「すみません…。」


平謝りをしながら加藤さんが立ち上がった瞬間にスパーリングが終わるブザーが鳴り響いた。

涼ちゃんに駆け寄ろうとするとミケが私の腕を掴む。


「離してよ。」

「ちょっと一緒に話を聞いて欲しいのです。」


そう言ったミケの目は会長さんしか見ていない。

会長さんはゆっくりと私達の方へと近付いて来る。


「ミカエル・T・アドハン選手だね?」

「ええ、ミケで結構です。VERTEXからの申し出は聞いて頂けてますか?」


会長さんがミケの言葉に険しい顔をする。

涼ちゃんがリングから降りて来る。

ゆっくりと会長さんが口を開く。


「ジムの移籍の件だな?」


涼ちゃんも篠原さんも会長さんの言葉に目を見開き驚愕の顔をしてミケを見た。

移籍?

当然、この驚きは私も同じだ。

ミケの顔を見る。


「今、内山田ジムではMr.RYOJIにはスパーリングパートナーが必要なんですよね?僕はアメリカジムの所属になっているので東京のジムも結局は仮のジムなんです。だからスパーリングパートナーとしての移籍をVERTEXから指示を受けました。」


ミケがジムの全ての人に聞こえるように会長さんに説明をしていた。


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