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第19章 欲しいのなら…



「不動産屋さんなんか知らないわよ。」

「理梨、地元ですよね?」

「高校生が知ってる訳ないでしょ?」

「理梨は大学の為に部屋を探したりはしなかったのですか?」

「悪いけど…、地元の大学志望だから…、実家を出るつもりはないの。」

「理梨は冒険を知らないお姫様だ。」


ミケがクスクスと笑う。


「あくまでも移籍は来年からで今は部外者なのだから早くジムから出て行ってくれるか?」


会長さんがミケを急き立てる。


「では…、今日は帰ります。理梨…、またね。」


好き勝手を言った野良猫がジムから出て行くとホッとする。

シャワーを済ませた涼ちゃんが何事もなかったように私の前に立つ。


「帰ろう…。」


いつもと変わらない笑顔。

なのに、その笑顔に寂しさを感じる。

いつもと同じように2人で涼ちゃんの家に帰り涼ちゃんがご飯を食べて自分の部屋に行く。

ベッドに入れば必ず私にしがみつくようにして眠ろうとする。


「もしかして…、怒ってる?」


何も言わない涼ちゃんに不安になる。


「怒ってはいない。ミケさんはああいう人だし…。」


そう言いながらも私の顔を見ようとはしない。


「なら…、なんで不機嫌なの?」


私の顔を見ない時はいじけてる時…。

気に入らない事があっても私には八つ当たりみたいな事をしたくないからと自分だけで我慢をしてしまう涼ちゃんに寂しくなる。


「理梨がミケさんには怒らないんだと思うから…。」

「怒ってるよ。」

「本気じゃ怒らないだろ?」

「そりゃ…。」


ミケは涼ちゃんとは違うから…。


「俺だけの理梨で居て欲しいと思うのは…、俺の我儘なのかと思う。」


泣きそうな顔…。

泣きそうな声…。

切なくて胸が痛くなる。


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