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VERTEX
第20章 親戚…

こういう時に平然としているのはマイペースなうちのお母さん…。
「涼ちゃんがチャンピオンになったら…、理梨と結婚をすると約束をしたと言ってるの。その為に本田さんがわざわざ御挨拶に来られたのだけど…、まさか…、アンタはそんな覚えはないとか言わないわよね?」
お母さんが目を細めて私を窘めるようにして見る。
5歳の私は今と同じ状況で涼ちゃんを盛大に振った女の子だから…。
今回はあの頃とは違って涼ちゃんは本気だとお母さんが言っている。
「涼ちゃん…。」
責めるつもりはないけれど…。
出来れば先に一言は欲しかったと言いたくなる。
犬男はいつも通りにニコニコと穏やか笑顔で私に尻尾を振っている。
「あのな…、理梨…。」
包むようにして私の両手をそっと握る。
いつの間にか私よりも遥かに大きくなった手を眺めてしまう。
「理梨とはチャンピオンになったらって約束をしたけれど…、理梨が短大を出るまではケジメとして簡単には結婚とか出来ないだろ?」
涼ちゃんが私の手に口付けをする。
両親が居ようとなんだろうと涼ちゃんが私にラブラブな態度は崩した事はない。
私だけが妙に恥ずかしくて何度も涼ちゃんにツンデレな態度を取った事もある。
「だから…、理梨とは今はちゃんと婚約だけはしておきたいと思ったんだ…。」
「そういう事は…、先に相談して欲しかった!」
「うん、でも…、また前みたいに理梨に嫌だって言われたら、俺…、多分立ち直れない。」
5歳の拒否は涼ちゃんには相当なトラウマになっているらしい…。
「受け取って欲しい…。幸村 理梨さん…、俺と結婚して下さい。」
私の手に小さな宝石箱を握らせて涼ちゃんが言う。
お母さんがニヤニヤとして涼ちゃんのお父さんとうちのお父さんが照れて真っ赤な顔をしていた。

