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第20章 親戚…



「私には似合わない…。」

「そんな事はないよ。」


涼ちゃんが薄いピンク色のルージュを出して私の顎を持ち上げる。

初めてのメイクまで涼ちゃんにして貰う。

鏡の中の私が涼ちゃんに釣り合う女の子に変えられていく。

やっぱり魔法使いは涼ちゃんなの?

そんな子供じみた事を考えた。


「行こうか?」


涼ちゃんがエスコートするように私の手を握る。

小さな女の子が紺色のタイトなスーツで歩きにくいヒールを履いてフラフラする姿って情けない。


「理梨は嫌かもしれないけど…、少しだけだから我慢してくれよ…。」


車を走らせながら涼ちゃんが言う。

そんな涼ちゃんの言葉に頷くしかない。

ランチにパスタを食べたら涼ちゃんは漁師町の方へと車を向ける。

そこには涼ちゃんのお父さんの実家があるから…。

涼ちゃんのお父さんは大学に進んだ。

その時、漁師をしていた涼ちゃんのおじいちゃんが身体を壊して家族でどうするかという問題になった。

涼ちゃんのお父さんの弟…、つまり涼ちゃんの叔父さんが高校を出たらおじいちゃんの跡を継ぐと言った。

それで全てが解決をしたはずだったのに…。

数年後におじいちゃんが亡くなった途端に叔父さんの奥さん…、叔母さんが突然、豹変をした。

おじいちゃんと毎日のように漁師の仕事をしていたおばあちゃんとは違い、叔母さんは組合で事務をしている人だった。

叔母さんは若い時に都会に憧れた人らしい…。


『義兄さんに漁師を押し付けられた不甲斐ない夫。』


おじいちゃんの跡を継いだ叔父さんに対して、そういう考え方をするように変わったと聞いた。

何故なら、叔父さんの家の子供は3人…。

その全てが女の子…。

だから本田家で唯一の男として生まれた涼ちゃんに漁師をやらせるべきだと言ったのも叔母さんだった。


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