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VERTEX
第20章 親戚…



前に涼ちゃんが初めてのプロデビューをした時の事を思い出す。


『本当は理梨にもなんか買ってやりたいけど…、理梨はまた今度な。』


涼ちゃんは初めて貰ったファイトマネーでおばあちゃんに何かを買ってあげたいと言った。

その頃は地方試合のファイトマネー…。

僅か数万円のファイトマネーだからおばあちゃんにプレゼントを買ったら残らないんだと涼ちゃんは笑っていた。

あの時はアウトレットがこの町には出来たばかりだったから田舎町の誰もが、その大型ショッピングモールへと押し掛ける。

その日は私と涼ちゃんだけでおばあちゃんのプレゼントを買いに行くつもりだったのに沙月さんと卯月さんもついて来た。

おばあちゃんのプレゼントはそっちのけで涼ちゃんに自分達の欲しいものを買わせた沙月さんと卯月さん。

かろうじて、おばあちゃんの膝掛けは買えたけれども涼ちゃんがファイトマネーを貰える事を知った2人は事あるごとに買い物に連れて行けと涼ちゃんに強請るようになった。

そんな事が続くから、だんだんと涼ちゃんはこの家に近寄らなくなってしまった。


「今日は…、この後で理梨の実家の方にも挨拶に行くから…、無理だ。」


涼ちゃんが2人のお強請りを断るとみるみると険悪なムードが本田家に漂った。


「いつも、理梨…理梨…、理梨さんがアウトレットに行きたいって言えば、尻尾振って連れて行くくせに。」

「自分が本田家の跡取りだなんて全く思ってないからでしょ?」

「ちょっとテレビに出て有名人になったからって勘違いをしてんのよ。VERTEXなんて所詮は1発屋と同じなんだから大人しく漁師をやってれば良かったと後悔する事になるのに…。」


沙月さん、卯月さん、叔母さんの猛攻撃が始まったらもう手に負えないとか思っちゃう。


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