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VERTEX
第20章 親戚…

ここで私が
『うちの挨拶は今度でいいよ。』
と良い嫁のフリをすれば丸く収まるのだろうとはわかっていても、涼ちゃんの気持ちを考えるとそんな無意味な優等生面は学校だけでお断りとも思う。
「涼ちゃん…、時間だから…、そろそろ行こう。」
別に時間とか決まってない。
本当はうちのお父さんの方のおじいちゃんとおばあちゃんは今夜のお祝いにと我が家に来てくれる約束だから涼ちゃんはその時に挨拶をすればいいだけの話。
それでも、この家に居るとお腹が痛くて逃げ出したいと思っちゃう。
「また…、おいでね。」
涼ちゃんのおばあちゃんが寂しく笑う。
「今度はもっとゆっくりと来ます。」
おばあちゃんの手を握ると、とても暖かくて泣きそうになった。
沙月さん達が居ない日に来たいと思う。
本当は今日だって涼ちゃんは無理に休みを取っているのだから、親戚だと言うのならもう少しくらい気遣いをして欲しかった。
VERTEXに興味がない人達からすれば涼ちゃんの苦労なんか全く気にしないのだと感じる。
派手な演出で試合がテレビ放映されて、タレント扱いされているくらいにしか理解をして貰えない。
本田家の中には涼ちゃんの努力という言葉が存在しない事に泣きたくなる。
私はその本田家の嫁になる。
その事実が悲しくなるクリスマス…。
「やっぱり…、あの家は嫌いだ。」
帰りの車を運転する涼ちゃんが呻くように言う。
「気にしないよ。今度はおばあちゃんとアウトレットに行こうよ。」
無理に笑顔を作って涼ちゃんに言ってみる。
私までもが本田家を嫌いだと言えば涼ちゃんはますますおばあちゃんと会わなくなってしまうから…。
おばあちゃんはいつもニコニコとしていて私も涼ちゃんも同じように可愛がってくれたおばあちゃん。

