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VERTEX
第21章 負傷…
大人にもなれず、子供のままでもいられない私と涼ちゃんだけがどんちゃん騒ぎから抜け出した。
家の前まで涼ちゃんと出る。
「ここでいい…。」
「でも…。」
そう言った唇に涼ちゃんの唇が重なった。
力強く涼ちゃんが抱きしめる。
暖かくて静かなクリスマス。
正式に涼ちゃんと婚約をした。
VERTEXでも学校でも私は涼ちゃんの婚約者として胸を張れる。
もう後ろめたい気持ちはどこにもない。
だから涼ちゃんはもう何も心配をせずに試合だけに集中する事が出来る。
ここから先の涼ちゃんには私の存在すら打ち消されてしまう。
頬に冷たいものが当たった。
キスが離れて目を開ける。
「雪…?」
涼ちゃんと手を繋ぎ2人で夜空を見上げる。
いつか見た満天の星空のような美しさはなくとも静かに私と涼ちゃんを包むように雪が桜吹雪のように舞う夜空に惹き込まれていく。
風はなく、しんしんと降り積もる雪の中で涼ちゃんの温もりだけを感じるとこの世界で2人だけになった気分になる。
「風邪…、ひいちゃうよ。」
「わかってる。」
お互いが手を離せないまま時間だけが過ぎていく。
私から涼ちゃんの手を離す。
「試合に負けたら許さない。」
「理梨が居るから負けるわけがない。」
強気の涼ちゃんの顔に変わると私の頬に軽くキスをして涼ちゃんが自分の家に帰った。
私の役目は強気で涼ちゃんを戦いに送り出す事…。
試合が終わって帰ってくれば誰よりも私に甘えて私を甘やかすダメな男に戻ってくれる。
静香さんの言っていた言葉の意味が少しだけわかったような気がする。
私が涼ちゃんの背中を叩かなければならない。
涼ちゃんが好きだから…。
涼ちゃんを信じて送り出すしかないとわかったクリスマスの夜はいつまでも雪が降り続き、朝には真っ白な世界を作り出していた。