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VERTEX
第21章 負傷…
「お母さん…、行って来ます!」
「気を付けてね。」
明日からは2日間のVERTEXビックイベント…。
今回は私1人でアリーナに向かう。
後一月で子供が生まれる静香さんは実家に帰ってテレビで応援をする。
だから私は初めて1人で涼ちゃんの応援に向かう。
負けたら、涼ちゃんは婚約を破棄しかねない。
そういう真面目なところは好きだけれど、そうやって私から離れてしまう道を選んだ人を私が追いかける立場に入れ替わった。
ただ神に祈る。
幸せとか派手な人生は要らない。
平凡で地味な人生をあの人と送りたい。
その為に必要な彼の戦いを守って下さい。
移動中の新幹線の中で1人で祈り続けた。
クリスマスの雪はもう溶けて消えちゃった。
雪は消えても涼ちゃんとの思い出は増えたと思う。
ずっと涼ちゃんと居た。
これからも涼ちゃんと居る。
星空を見るたびに石垣島の思い出を涼ちゃんと思い出し、雪を見るたびにクリスマスの思い出を涼ちゃんと思い出す人生を歩む事になる。
どんなに平凡な思い出でも涼ちゃんとなら笑って話せる平凡な人生の為の1歩を涼ちゃんが進む。
私はそんな涼ちゃんを応援するだけだ。
アリーナを見上げて睨みつける。
負けたら絶対に許さないから…。
1人でホテルに向かってチェクインを済ませると1人でホテルのレストランに行き、1人では食べきれないくらいの食事を頼んで食べ始める。
1人だからする事がない。
1人だと嫌な事を色々と考えてしまう。
1人って食欲がなくなるから…。
何も考えずにひたすら食べる事だけに集中をする。
倒れたりなんか出来ない。
食欲がないなんて言ってられない。
最後まで涼ちゃんの姿を見届けなければならない。
そんな義務感に急き立てられた気分で黙々と食事をする私がいた。