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第21章 負傷…



当然、無理に絞め技に持ち込もうとする相手の力を利用して涼ちゃんの方が相手のマウントを取る姿勢にひっくり返そうとした。

ゴンッ…

鈍い音が響く。

焦った相手が振り回した肘が涼ちゃんの額にクリティカルした音…。


「反則だ…。」


会場内からそんな声がする。

肘打ちによる打撃は反則としている。

なのにレフリーは試合を止めずに相手がひたすら涼ちゃんの背後へと回り込む。

涼ちゃんの動きが変だと思った。

少し俯き加減で頭を振る。

肘打ちで涼ちゃんの頭に影響が出ている…。

まずいと思った時には涼ちゃんの額から一筋の鮮血が流れ落ちた。


『止めて!』


レフリーにそう叫びたくなる。

しばらくは涼ちゃんの背中に相手がしがみつき、涼ちゃんがそれを振り払うような仕草を繰り返す。

血が止まらずに涼ちゃんの顎まで流れ落ちている。


「レフリー…、なんで止めないんだ?」


そんな男の人の声がする。

相手の腕が涼ちゃんの顎の下に入った。

3秒もせずに涼ちゃんの顔色が変わっていく。

チアノーゼ…。

絞め技が完全に入った。

やっとレフリーが涼ちゃん達に近付くと涼ちゃんにまだ戦うかを確認する。

涼ちゃんが横に首を振る。

血が飛び散り顔がどす黒くなっているのに涼ちゃんは戦う意思だけをレフリーに見せる。


もう…、いいから…。


私がセコンドならタオルを投げ入れてこの試合を終わらせる。

だけどセコンドの篠原さんは全く動く気配がない。


もう…、止めて!


リングから目を逸らす。


「うぉっ!?」

「マジ!?」


歓声が上がり客席が盛り上がる。

何事かと再びリングへと目を向ける。


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