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VERTEX
第22章 挨拶…
RYOJIなんか大っ嫌い!
涼ちゃんを私から奪うVERTEXなんかもっと大っ嫌い!
涙が止まらないのに涼ちゃんは会長さんと明日の試合について話を始めている。
「ひとまず、病院へ行く。簡単に脳の検査を受けた上で明日の昼まで異常が無ければ出してやる。」
「了解…。」
「但し、明日の試合で再び出血をするようならタオルを覚悟しておけ。」
「タオルを入れたら俺は一生、会長を恨むよ。」
笑ってそんな話をしている。
「篠原に荷物を取って来て貰え…。」
会長さんがそう言うと涼ちゃんが治療用ベッドから降りて私から離れていた。
「涼ちゃん!」
叫ぶ私の腕を会長さんが握る。
「今の段階では、皮膚が裂けただけという判断で縫うほどでもなかったんだ。現に、涼二は自分で真っ直ぐに歩けている。今からちゃんとした病院で一応は検査をするが心配はないと思うから理梨ちゃんは客席に戻ってくれるか?」
会長さんはもう私を部外者として扱って来る。
涼ちゃんを説得出来ない私はただの部外者に成り下がる。
「失礼…、します…。」
俯いたまま医務室の出口へと向かうと涼ちゃんが篠原さんと話をしている姿が見えた。
咲良ちゃんは諦めたらしく、もうそこには居ない。
「理梨…。」
涼ちゃんが私に声を掛けて来る。
なのに、私は涼ちゃんを見る事すら出来ずに黙って医務室を飛び出していた。
早く、ここから逃げ出したかった。
私の居る世界じゃない…。
涼ちゃんが居なくなるこの場所は私が居てはいけない場所。
そう思って、無闇に通路を走り抜ける。
私って馬鹿だ…。
方向音痴のくせに案内もなく1人でここから出られる訳がなかった。
自分がどこに居るのかすらわからずに泣きながら立ち止まってしまっていた。