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VERTEX
第22章 挨拶…
肩が叩かれる。
VERTEXのスタッフなら謝って外に連れ出して貰おうと思った。
「理梨…、また迷子ですか?」
ゆっくりとその声に向かって顔を上げる。
首が痛くなるほど見上げる必要がある人…。
「ミケ…。」
ボロボロと涙を流しながらミケにしがみついた。
「理梨…?Mr.RYOJIに何かありましたか?」
落ち着いた声でミケが聞いて来る。
私は泣きながら首を横に振る。
「知らない…、もう…、あんな人は知らない…。涼ちゃんじゃないもん。私の涼ちゃんじゃないもん。」
ただ悔しくて馬鹿な事を言ってしまう。
涼ちゃんに初めて拒絶されたのがショックで完全に自分を見失っていた。
「わぉ?落ち着いて…、理梨…、ほーら、泣かなくても大丈夫ですよ。どんなお話しでもお姫様は最後は笑って幸せになるのは世界共通なのですから…。」
涼ちゃんの代わりにミケが私を抱きしめる。
馬鹿な私はひたすらミケに縋り付く。
だって…、こんなの耐えられない。
涼ちゃんと幸せな結婚をする事よりもVERTEXのせいで優しいだけの涼ちゃんを失うかもしれない事の恐怖の方が私には大き過ぎる。
「もう…、やだ。こんな場所…、もう…、ここに居たくないの!」
「OK.ご飯でも食べに行きましょう。」
ミケが私の手を握って歩き出す。
気付けば私はミケの車に乗せられていた。
「Mr.RYOJIと何がありましたか?」
車を運転しながらミケが聞いて来る。
「怪我をしてるのに…、明日の試合に出るって言って聞かないの。そんな事よりもミケは勝手に抜け出して大丈夫なの?」
「今日の試合は終わってますから、勝った選手は明日の為に食事とかは好きな時間に食べても良いし、早めにホテルに帰って休んでもいいんですよ。」
負けた選手はスポンサーに挨拶をして帰るだけだとミケが言う。