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VERTEX
第22章 挨拶…
勝った選手には明日があるのだから、今夜だけはVERTEXに振り回されたりはしなくて良い。
「ミケ…、自分の車で来てるの?」
「今回は1日早くこっちに来ましたからね。仮のジムに居候をしているファイターは自分の事は出来るだけ自分でやらなければならない。」
「随分と厳しいんだね。」
「それが嫌ならチャンピオンになるしかないんです。頂点を取る為の世界なのですから…。」
ミケの言葉にゾクリとする。
明日、ミケは霧島さんを倒すつもりなんだという事を思い出した。
「ミケ…、ごめん。降ろして…、やっぱり私は自分のホテルに帰るから…。」
「ダメです。1人にしたら理梨はまたご飯を食べないつもりでしょ?」
「食べるよ。」
「嘘はいけません。理梨はVERTEXに耐えられない弱いお姫様だという事をMr.RYOJIはもっと理解をするべきだ。」
そう言うとミケは私にお構い無しに車を走らせる。
「ミケ…、お願い。ちゃんとご飯を食べるから…。」
「なら、理梨のホテルで食事をしましょう。レストランで食事をして理梨がちゃんと部屋に入るのを確認したら僕は帰ります。」
爽やかに私に微笑むミケが聖書に出て来る天使に見えた。
ミカエルって…、大天使の名前だったよね…。
綺麗な顔のミケ…。
きっと赤ちゃんの時は本当に天使のように可愛い赤ちゃんだったから大天使の名前が付けられたんだとか、くだらない事を考える。
天使に悪い人は居ないだろうとか甘い考えを持ってしまう。
宗教学校で教わった中途半端な知識がいけなかった。
「レストランでご飯を食べるだけだよ。」
「ちゃんと食べて下さいよ。」
単純にミケは私の身体を心配してくれているだけだと思っていた。