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VERTEX
第22章 挨拶…
だから答えなんか出せる訳がない。
「私の事はいいんだよ…。それよりもミケの方だよ。」
「僕?」
「もし、霧島さんに勝ったら許さない。」
軽い気持ちでそう言っていた。
「理梨…、それは八百長という犯罪です。」
ミケが呆れた顔をする。
「わかってるもん。」
「わかってませんよ。理梨…、もし僕が本当に理梨の為に負けてあげると言ったら理梨はどう思いますか?」
真っ直ぐな蒼い瞳でミケが私を見る。
私のせいでミケが負ける?
そこまで深く考えた事がない。
ミケだって、ここまで強くなるにはそれだけの努力をして来たはず…。
それを私は自分の我儘で負けて欲しいと言っている。
ますますVERTEXが嫌いになる。
VERTEXは私の好きな人達を争わせて戦わせる。
「理梨…、難しく考える必要はないのです。もし僕が理梨の為に負けてもそれは僕が選んだ事で理梨が責任を感じる必要はない。」
ミケが私の手を握る。
「そろそろ理梨は寝た方がいい。僕も明日の為に自分のホテルに帰ります。」
ミケに促されてレストランを出ていた。
私の部屋の前までミケが送ると言ってくれる。
「ホテルの中だから、そんな心配は要らないわよ。」
「アメリカじゃホテルから拐われて行方不明になる女の子は山ほど居ますよ。」
意外とミケも過保護なタイプだと思う。
涼ちゃんは過保護過ぎる…。
だから何でも涼ちゃんに甘えてしまう。
そんな事をぼんやりと考える。
部屋の前まで来た。
「ねぇ、理梨?アメリカに来ませんか?」
「へ?」
ミケの言葉に驚いてミケを見上げるようにして見る。
いつの間にかミケの顔が目の前にある。
ミケ!?
チュッ…。
というリップ音が唇で奏でられていた。