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VERTEX
第22章 挨拶…
頭が完全に真っ白だった。
涼ちゃんにあれほどミケに近づくなと言われていたのに、それすら聞かずに馬鹿な私はアッサリとミケにキスを奪われた。
涼ちゃん…。
罪悪感に涙が溢れて来た。
「何も泣かなくても…、このくらいアメリカじゃ挨拶ですよ?」
ミケがまた私に呆れた顔をする。
「日本じゃ挨拶じゃないもん!」
「だから、理梨…、僕とアメリカに行きましょう。理梨が一緒に行ってくれるのなら、わざとMr.霧島に負けてあげますよ。」
「絶対に行かない!霧島さんはミケなんかに負けないもん!」
「なら、Mr.霧島を容赦なく倒します。Mr.RYOJIが頂点になるつもりならば彼も容赦なく倒すだけです。」
今まで見た事がないほどにミケが冷たい顔をする。
これがファイターの本能だと理解をした。
チャラチャラとしていい加減なミケでも戦う時は別人になるのだとわかった。
「理梨は…、VERTEXとは離れた世界で生きるべき女の子です。僕とアメリカに行くなら僕は弁護士に戻ります。理梨はもう泣く必要はなくなります。」
自分の言いたい事を一方的に言うとミケが私の髪にキスをする。
「おやすみなさい…。」
ようやくミケが立ち去ってくれたから慌てて部屋に入るとその場で腰が抜けていた。
私はVERTEXとは離れた世界で生きるべき?
ミケの言葉が頭の中でいつまでもグルグルと回り続けて離れない。
涼ちゃん…、助けて…。
一瞬でも涼ちゃんを裏切った自分が許せなかった。
今すぐに帰りたいと思う自分がいた。
明日の試合なんかもうどうでもいい気分。
ミケも涼ちゃんも負けちゃえばいいんだ。
1晩中、泣き明かし朝を迎えていた。