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VERTEX
第22章 挨拶…
昼過ぎまでホテルから動けないままだった。
決勝戦…。
VERTEXのチャンピオンが決まる日。
霧島さんとミケの試合は一番人気としてテレビ放映のメインに生放送で流される。
勇気君や涼ちゃんはその前に試合が始まる。
人気がある試合は全て生放送…。
その為に比較的に遅い時間から始まるからと焦ってアリーナに行く必要はない。
ただアリーナでは昼から既に様々な試合が始まっている。
観客が喜び盛り上がった試合はテレビ放映にダイジェストとして出されて人気投票に影響をする仕組み。
そうやって人を競わせて戦わせるVERTEXの感覚が理解出来ない。
戦って傷ついて…、それで何を得るの?
私の為に戦うと言った涼ちゃんはもう私を手に入れたのに、まだ戦うと言う。
涼ちゃんがわからない…。
そこに私の気持ちは入っていないとミケが言う。
ミケなら私の為にVERTEXを辞めてアメリカで普通に弁護士の仕事をしてくれると言う。
VERTEXを辞めたら何もない涼ちゃん…。
そんな人と結婚をすると決めてしまって本当に良かったのかと、いけない考え方をしてしまう。
夕方までにアリーナに行かなければならないのにアリーナの前まで行きながらも今すぐに帰りたいと思って立ち止まってしまう私が居た。
「ねぇ、もしかして…、理梨ちゃん?」
聞き覚えのある声にゆっくりと振り返る。
「胡桃さん?」
大きなカメラを持って関係者用のパスを首から下げる胡桃さんが何故、こんな所に居るのかとぼんやりと考える。
「中には入らないの?」
ぼんやりとする私に胡桃さんが聞いて来る。
「………。」
胡桃さんの質問に答えられない私だった。