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VERTEX
第23章 敗北…

ずっと見て来た。
ずっと貴方だけを見て来た。
この先もきっと貴方しか見る事が出来ない。
だって私はVERTEXは嫌いだもの。
だから貴方の試合しか私は応援が出来ない。
2Rが始まるコングが鳴った…。
スッ…。
と涼ちゃんが消えたように感じる。
「行けえぇぇぇ!」
初めてリングの涼ちゃんに向かって叫んでいた。
いつも祈るようにして嫌々ながら観る事しかしてあげられなかった。
今日だけは涼ちゃんをしっかりと応援をしてる事を伝えたかった。
ズドンッ…と鈍い音がして相手の身体が横に曲がる。
そのまま涼ちゃんの右腕が突き上げるように天に向かう。
ボディーブローからのアッパーカット…。
ミケが昨日見せた技を涼ちゃんがそのままやって見せた。
そのスピードはミケよりも早く、軽やかで美しいとすら感じる。
相手がリングに崩れ落ちても涼ちゃんの右腕は天に向かって上がったままだ。
勝利宣言…。
「Seven…。」
レフリーのカウントが始まっている。
観客の声もレフリーに合わせてカウントする。
「「Nine…、Ten!!」」
ウワァァァァア!!
試合終了のゴングの音が聞こえないくらいまで観客の歓声が沸き起こる。
行かなくっちゃ…。
リングを穏やかな笑顔で降りる涼ちゃんの横顔を見ながらそう思った。
客席の間の通路を抜けようとした。
誰かが私の前に立ち塞がる。
「咲良ちゃん…。」
私の前には学校では見た事がないような顔をする咲良ちゃんが居た。
「ねぇ、説明をしてくれる?理梨ちゃんがRYOJIさんの家族って…、どういう意味?理梨ちゃんって兄弟なんか居ないって言ってましたよね?」
咲良ちゃんを連れてひとまずアリーナの通路に出た。

