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VERTEX
第23章 敗北…



背中にはダサい『内山田ジム』のロゴが入ったTシャツ…。


「理梨…、もしかして…、怒ってる?」


恐る恐ると怯えた情けない顔をしてチャンピオンが私に聞いて来る。


「うん、怒ってる。」

「マジか!?」

「お陰でいっぱい泣いたから…、ミケにキスされた。」

「あいつ…、マジで沈めてやる。」

「篠原さんは?」

「会長と霧島さんに付いてる。」


涼ちゃんの治療だけをして篠原さん達は霧島さんの準備に入っている。

しばらくは2人っきりだと涼ちゃんが言う。


「キスして…。」

「理梨がして欲しいなら…。」


いつもと変わらない優しいキスをしてくれる。

全てが私の為…。

チャンピオンになっても私の言いなりで私には必死なだけの情けない男が私の腕の中に帰って来た。


「とうとうチャンピオンだね…。」

「俺は俺、理梨との約束を果たしただけ…。」

「でも…、もう無茶は嫌だよ。」

「もうしない…。今回だけは霧島さんの為もあったから仕方がなかったんだ。」


涼ちゃんが悲しそうな目をする。


「霧島さんの試合…。」

「そろそろ…、始まる。」


涼ちゃんが机の上にあるパソコンのモニターを付けてテレビに切り替えた。

VERTEX一番人気の試合はテレビ放送の生中継だから選手の控え室でも霧島さんの試合の状況は誰でも確認が出来るようになっている。

涼ちゃんが私を後ろから抱っこするようにして抱えてくれるから2人でその中継を睨むようにしてみる。


「霧島さんが勝つに決まってるよ。」


私はそう自分に言い聞かせるように言う。


「無理だと思う。」


まさかの言葉が私の耳元でする。


「涼ちゃん…!?」


まさか涼ちゃんが霧島さんの負けを認めるとか思いもしなかった。


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