この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
VERTEX
第23章 敗北…

涼ちゃんの裏切りの言葉に怒りが湧いて来る。
「霧島さんが負ける訳ないじゃん!静香さんの為にも生まれて来る赤ちゃんの為にも、ミケなんかに負けるはずないよ。」
涼ちゃんを叱るように言う。
「気持ちでは負けてないさ…。だけど霧島さんはもう本当に限界なんだ。言い方は悪いけど俺でも今なら霧島さんに勝てるよ…。」
泣き虫の涼ちゃんが泣きそうになって言う。
それを認めるのは涼ちゃんが一番辛いんだと感じる。
霧島さんだけを追いかけて来た涼ちゃん…。
私の為だけど霧島さんという目標があった。
その目標が今、無くなってしまう。
涼ちゃんの代わりに私が泣いていた。
今は私の方が泣き虫だ。
涼ちゃんが私の涙を拭う。
「ちゃんと霧島さんの最後を観ないと…。」
涼ちゃんの言葉でテレビ画面を見た。
霧島さんもミケも、もうリングに上がっている。
2人とも爽やかな笑顔でリングに立つ。
ゴングが鳴り、2人の顔付きが一気に変わった。
1R…。
霧島さんの方が攻めているように見えた。
時々、ミケがロープ際に追い込まれる。
やっぱり、霧島さんの方が強いじゃん。
そう思いながら試合を見る。
きっちりとしたガードをするミケの表情は見えない。
そして2Rへ…。
やっぱり霧島さんの方が攻めていると感じた。
なのに…。
ロープ際に追い込まれたのは霧島さんの方だった。
「フットワークが上手いんだ。リングを征した方がこの試合に勝つ。明らかにミケさんの方がリングを完全に支配している。」
涼ちゃんが呻くように言う。
霧島さんがパワーでミケを追い詰めようとしても、ミケがヒラリとかわして、霧島さんのパワーを利用したままロープ際で体制が入れ替わってしまう。

