この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
VERTEX
第24章 役立たず…

頂点になるかならないかは涼ちゃんには関係がないのだと確信をする。
車のフロントガラスに白いものが落ちて来る。
「涼ちゃん…、雪だよ。」
そう言って車から降りて空を見上げる。
涼ちゃんが私を後ろから抱きしめて雪の中に立ってくれる。
真っ白な世界で想像出来るのはこの人だけ…。
それは自信満々のチャンピオンではなく、すぐに泣きそうな顔をする情けない犬男の顔。
カッコよくなんかなくてもいい。
頂点じゃなくてもいい。
黙って私に寄り添う優しいだけの涼ちゃんが好きだと初めて実感する。
「涼ちゃんを愛してる。世界中の人が私を涼ちゃんの恋人だと認めてくれなくても涼ちゃん以外の人を想像なんか出来ないから。」
「認めさせる。理梨以外を想像は出来ないんだから絶対に認めさせる。」
今年の新しい約束を涼ちゃんがしてくれる。
それだけで満足だと思う。
「涼二ー!」
駐車場の向こうでハリセンを振り回しながら怒鳴り声を上げている会長さんが見える。
「やべ…、初怒りの初説教かも?」
涼ちゃんがおどけたように言う。
「叱られて来なさい。」
私は犬男を会長さんの前に差し出す。
篠原さんも霧島さんも苦笑いをしている。
加藤さんや他の人も笑っている。
「頂点になるなら、最低限の礼儀とルールを守る事が必要なのは霧島を見てわかってんだろうが!」
「わかってるから…、帰っていいか?いい加減に腹も減ってるし…。」
「やかましい!お前にはとにかく頂点という自覚が無さすぎる。そんな事じゃそのうち理梨ちゃんに捨てられるぞ。」
「理梨はそんな事しねえもん…。」
涼ちゃんが子供みたいに会長さんに口を尖らせる。

