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VERTEX
第24章 役立たず…



涼ちゃんがお客さんに身体を向けた瞬間、私が涼ちゃんの前に立っていた。


「涼ちゃんと戦いたいのなら内山田ジムに来なさいよ。リングにすら上がれない人が好き勝手な事を涼ちゃんに言わないで!」


自分でも驚いた。

泣きながら酔ったお客さんに叫んでいる。

怖くてたまらない。

だけど涼ちゃんを守りたかった。

ボロボロと泣きながら何故か私がお客さんに向かってファイティングポーズを取っていた。


「お代は結構ですから…、今日はもう帰って下さい。」


店員さんが酔ったお客さんにそう言った。


「理梨…。」


涼ちゃんが私の肩を抱く。


「涼ちゃんが…、涼ちゃんがどれだけ苦労してるかなんか…、誰も何も知らないくせに…。」


悔しさだけで涙が止まらない。


「理梨がわかってたら…、それでいいよ。」


穏やかな声で涼ちゃんが言う。


「だけどっ!」

「理梨の為だけなんだ。理梨がわかってたらそれで充分だろ?」


涼ちゃんが私にだけは笑顔を向けてくれる。

酔ったお客さんをお店の外に引き摺り出した店員さんが戻って来る。


「ラーメン…、食べてって下さい。お代はいりませんから…。」


店員さんが何度も涼ちゃんに頭を下げる。


「代金は払います。」

「わかってるんです。VERTEXの選手がサインを出来ない事は…。前に来られた選手にも断わられた事があって…。ラーメン屋なんかやってたらサイン会なんか行けないから…。」


このラーメン屋さんはVERTEXの格闘が本当に好きなんだと思った。

出されたラーメンは本当に美味しかった。


「2人で半分ずつなんですか?」


店員さんが不思議そうに聞いて来る。


「この時間は本来は一切食べないんです。今日はお正月だから特別に食べてるんです。それでも…、いつも私と半分ずつなんです。」


涼ちゃんの代わりに私が答えていた。


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