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第3章 帰りたくない…



もう…、これ以上はカッコ良くなんかならなくてもいいよ…。

撮影でカメラを真っ直ぐに見る涼ちゃんにそう言いたくなった。

2時間ほどで撮影が終わった。

静香さんと待っていると先に霧島さんが来た。

白のTシャツに黒のブランドスーツ…。

首から金のブランドネックレスを下げてサングラスをしている霧島さんはどこから見ても目立つ芸能人っぽく見えてしまう。


「涼ちゃんは?」

「なんかスタイリストの人と話をしてたよ。」


霧島さんが教えてくれる。

5分もすれば涼ちゃんが現れる。


「涼ちゃん!?」

「その髪…。」


私と静香さんが驚愕する。

今朝、このスタジオに来るまではいつもの涼ちゃんだった。

金のメッシュが入った少し長めの髪。

Tシャツにスリムなジーパンに麻のジャケットというスタイルだったはず…。

その涼ちゃんが黒縁のメガネに真っ黒な髪をしてTシャツとジーパンはそのままなのにダボダボのダンガリーシャツを羽織ってる。


「似合う?」


涼ちゃんが私の頬にかするくらいのキスをして聞いて来る。


「涼ちゃんじゃないみたい…。」


としか言いようがなかった。

まるで普通の地味な大学生に見える。


「飯に行こう。」


霧島さんがそう言うから皆んなでスタジオを出た。

霧島さんの車は中華街へと向かう。

私は涼ちゃんと涼ちゃんの車で霧島さんの車の後ろを追いかける。


「なんで、そんな格好にしたの?」

「なんとなく…。」


微妙な顔で涼ちゃんが笑う。


「似合わないよ…。」


そんな言葉を言ってしまう。

本当はカッコいい涼ちゃんが嫌だと思う。

他の人に取られるとか嫌だから…。

なのにカッコ悪くなる涼ちゃんも嫌だとか思う。

我儘な私…。

泣きそうになる。


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