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VERTEX
第25章 半分っこ…
赤い顔をした望ちゃんがもじもじとしながら小さな声で呟いた。
「サイン…、下さい…。」
「この前の分は?」
私と涼ちゃんが驚いて望ちゃんに聞いた。
温子さんが笑う。
「違うのよ。この前、希がもっと色々な人のサインをたくさん欲しいって言ったから…。望はお兄ちゃんの為にたくさん涼ちゃんのサインを貰えばいいって勘違いをしてるのよ。」
いつも大好きなお兄ちゃんの為に必死な望ちゃんをギュッと抱きしめる。
「ジムの鏡開きの日は望ちゃんも一緒に行こう。お汁粉を食べて霧島さんや加藤さんのサインを貰えるようにお姉ちゃんが頼んであげる。」
「霧島さんはともかく…、加藤さんもか?」
「たくさん欲しいんでしょ?なら、篠原さんや会長さんのもありだよ!」
「いや、さすがにそれは望ちゃんを騙してる事にならないか?」
涼ちゃんが呆れた顔をする。
「だって…、霧島さん以外は居ないじゃん。」
「鏡開きには勇気も来るぞ。会長が誘ってたから。」
「本当に?」
「勇気も高校を出たら内山田ジムに移籍する。」
なら、勇気君の分のサインも無理矢理にでも書かせてやると意気込んでしまう。
「理梨…。」
「何?」
「明日、ばあちゃんの家に付き合ってくれ。」
涼ちゃんが微妙な顔で言う。
涼ちゃんが怪我をしたのをおばあちゃんもテレビで観て知っているから凄く心配をしている。
そのおばあちゃんの為にもお正月の挨拶に行かない訳にはいかない。
「いいよ。」
「ありがとう。」
その夜は私と望ちゃん、涼ちゃんと希君という組み合わせで一緒に寝た。
大人はお正月を目一杯楽しんでいる。
私と涼ちゃんは鏡開きまでの休みをいっぱい楽しもうと約束をした。