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VERTEX
第26章 身の程知らず…



「理梨はそれでいいんだ。それは俺が理梨を傷つけた証拠であり、理梨が悪い訳じゃない。それでも理梨は我慢をして俺の傍に居てくれる。」

「それって理梨ちゃんだけとは限らないでしょ?」

「母さんですら嫌がるんだよ。それでも理梨は俺の為に必死に我慢をしてくれてるんだよ。そういうのは胡桃にはわからねえだろ?」

「何を我慢してるって言うの?」

「人を傷つけて傷つけられるって事にだ。この世界に仕事として自分から入った胡桃とは違うんだよ。俺が皆んなを巻き込んでる。ばあちゃんも母さんも嫌がってる。理梨だって本当は嫌なはずだ。」


私が平凡で普通の子だと涼ちゃんがちゃんとわかっている事を初めて知った。


「VERTEXで誰もが俺が勝つか負けるかしか心配をしない世界で俺の身体や気持ちだけを心配してくれるのは理梨だけなんだよ。だから理梨を傷つけるな。俺と理梨の邪魔をするな。」


ファイターとして涼ちゃんが胡桃さんに言う。

胡桃さんはもう言い返せない。

ファイターを一番に理解していると言った胡桃さんだからこそ、ファイターの望みは絶対に聞かなければならない。

私には胡桃さんの恋心が可哀想に見えた。

私に気持ちを理解して貰えていない涼ちゃんが可哀想と言った胡桃さんの方が涼ちゃんに見向きもして貰えずに可哀想だと感じる。

胡桃さんがお父さんのような記者になりたかったのは事実なんだろうと思う。

ただ涼ちゃんを少しでも理解をしたくてVERTEXの記者になった胡桃さんはファイターの気持ちを理解出来ても自分の気持ちは理解をして貰えない。

可哀想なのは胡桃さん…。


「涼ちゃん…、身体が冷えるから…。」


私が言える事はそれだけだ。


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