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VERTEX
第26章 身の程知らず…



涼ちゃんが胡桃さんを邪魔だと言ったのは立ち話をすれば涼ちゃんの身体が冷えて風邪を引いたり、筋肉が硬直して怪我の元になったりする為の事。

胡桃さんが記者だと言うのならファイターと話をしたければ、ファイターの都合に合わせてアポを取った上で話をしに来いと涼ちゃんが言う。

その話ではVERTEXのファイターとしてのRYOJIの姿しか見せない。

涼ちゃんの本音や気持ちは胡桃さんには見せない涼ちゃんなんだと初めてわかった。


「帰ろう…。」


涼ちゃんがそう言って走り出す。

その後をついて行けるのは私だけ…。

いつまでも公園に取り残されたように立ち尽くす胡桃さんを残して私と涼ちゃんは前しか見ない。

涼ちゃんが振り返ってくれるのは私にだけなんだという確信を持つ。


「やばい…、マジで身体が冷えたかも。ちょっとだけ飛ばす…。」


涼ちゃんの走るスピードが早くなる。


「石垣島は暖かかったね。」

「練習をするなら、良い島だったよな。」

「お母さんが石垣牛を気に入ってた。」

「理梨が卒業したら行こうか?なんなら父さん達や理梨のおじさん達も誘って…。」


あの時の約束をちゃんと果たしてくれる。

しかも、今度は家族だけで行こうと言っている。


「うん、皆んなで行こうね。」


ファイターの涼ちゃんは冷たいと感じる時があってちょっとだけ怖いと思う。

でも、それは霧島さんも同じで、本田 涼二の時は家族や私に優しいだけの涼ちゃんになってくれる。

静香さんが霧島さんを信じて待つ気持ちがやっとわかって来た。

不安で堪らないから静香さんも他の人と恋愛をしようとした。

だけど自分の気持ちは変えられない。

静香さんは霧島さんが好きだから霧島さんと結婚を決めた。

私が涼ちゃんが好きだという気持ちはどうしようもないのだから、私は涼ちゃんに置いて行かれないように必死に涼ちゃんについて行くしかなかった。


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