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VERTEX
第26章 身の程知らず…



加藤さんは今年からようやくエキシビションマッチに参加が決定した。

涼ちゃんとのスパーリングで加藤さんがVERTEXでトーナメントに出る事は不可能だと悟ってる。

それでも…。


「望ちゃんにサインが欲しいって言われるくらいの選手にはなりたいね。」


加藤さんが私にそう言って笑いかける。

地方試合では涼ちゃんが居ないから間違いなく加藤さんがチャンピオンだったのに…。

VERTEXではそんな扱いの選手になる。

そこから這い上がって来たミケは本当に強い選手なんだと思う。

きっと涼ちゃんや霧島さんと同じくらいに努力をして練習をして来たのだとはわかる。

それでもミケに優しくしてあげる事は出来ない。

涼ちゃんに少しでも不安を与える事は絶対にしてはいけないと嫌という程に理解をした。

鏡開きの翌日からは涼ちゃんは通常練習に入る。

私も付き添いをしたいけど、残念ながら学校が始まるからと涼ちゃんにばかりは構ってられない。


「学校…、面倒ー!」


朝から叫ぶ。


「後…、ひと月で卒業なんだから我慢をしなさい。」


お母さんに窘められた。

わかってる。

学校を卒業してからゆっくりと春休みに車の免許を取りに行く予定になっている。

学校のお嬢様達みたいな贅沢は出来なくても私に必要なものは両親が全てやらせてくれている幸せが最近になってわかって来た。

春休みに涼ちゃんが石垣島に連れて行ってくれる。

お父さん達も土日を利用して一緒に来てくれる事が決まっている。

充分に幸せだと思っていた。

平凡な女子高生生活ももうすぐに終わる。

花の短大生活の始まりに期待をする。

彼氏がいて、就職に焦る必要のない生活。

何も出来ない自分には至れり尽くせりだと感じる。


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